Abstract
講演要旨
[A] 「海洋・港湾鋼構造物の腐食損傷と対策」
JFEエンジニアリング 玉田 明宏
要請された「重厚長大」型構造物の代表例として「海洋・港湾鋼構造物」を選び,その腐食損傷の事例,特徴と「超」寿命社会資本を目指した新しい対策技術動向を紹介する.
海洋・港湾環境は海洋大気部,飛沫帯,干満帯,海中部,海底土中部に区分され,主要構造材料である鋼のそれぞれにおける腐食の現象,程度,機構が異なる.また,乾湿と塩分濃縮,温度,波浪,潮流,汚染,干満/海中上部のマクロセル形成,生物付着と隙間の形成等の腐食への影響も大きい.耐食鋼の合金元素の効果や生成錆の影響もこうした環境条件により変動し,さらには腐食疲労,水素脆化現象も絡んで,材料の腐食損傷を複雑にしている.
防食技術としては古くより塗装,有機・無機被覆,電気防食等が使用されてきた.最近100年耐用を目指した関西空港連絡橋,東京湾横断道路橋等が建設され,LCCの視点から水線部にチタン,耐海水ステンレス鋼,極厚膜有機ライニング等が採用され,現在これらの防食法の劣化プロセス・機構の解明・証明,耐久性と寿命予測の評価技術等が課題となっている.
[B-1] 「設計時の水質分析による建築設備腐食の予防」
鹿島建設 村田 和也
建築設備で用いられる水は概ね清浄な淡水であり,その中に含まれる微量成分の多寡によって,その性質が大きく変化することは,感覚的には理解しづらい.建築設備の設計にあたり,井水などの独自水源を用いる場合には事前に水質分析を行うが,水道水の場合には水質は安定しているものとして分析が行われることはまず無い.しかし建築設備の腐食事故原因究明を行うと,しばしば「水質が原因でした」と報告しなければならないことがある.
今後は,建築設備の材料設計にあたっても,腐食性などを評価するための水質分析から始めるべきではないだろうか.
本講では,建築設備の腐食と水質の関係,及び設計時の水質分析による評価事例を紹介する.
[B-2] 「高強度ステンレス鋼の腐食の発生とその対策」
石川島播磨重工業株式会社 中山 元
腐食環境において高強度を有する耐食性材料へのニーズが高く,多数の材料(合金,表面処理など)が開発されている.しかしながら,それぞれの市場は小さく,必ずしも上手く使えていない.更に,高強度ゆえの製造可能寸法の制約,異方性,焼き入れ性などの問題が加わり,さらに問題を複雑にしている.
1)10年間のノーメンテを要求されているプラントの冷却水配管遠隔接続・脱離機構部(継手+バルブのようなもの)での実証確認機で発生した閉鎖トラブル,
2)トラブル対応で材料を探す過程で材料メーカーの「高耐食性」の売り文句に騙されてより大きなトラブルに発展した加圧容器の例,
3)レール材として高強度ステンレス鋼を採用して重量の低減を図ることによって構造物の重心を下げることによる機器の安定性を向上させることに成功した例を紹介する.
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