Abstract
平成19年度 第2回材料のパフォーマンス研究会 講演者と概要
[A] 「味の素と腐食防食」
すずき技術士事務所 鈴木 紹夫
味の素の製造は1908年の操業開始より1965年に製法転換されるまで,植物たん白の熱濃塩酸による加水分解,抽出によって製造されていた.熱濃塩酸の工業的取り扱いは装置材料の腐食という面で困難をきわめ,装置材料とその腐食問題が企業存続の死命を制した歴史を有する.当時よりの同社の腐食防食技術に対する取り組み姿勢,耐塩酸材料の開発および使用実績等につき解説する.
[B-1] 「カソード電流に及ぼす微生物ならびにバイオフィルムの影響」
物質・材料研究機構 鷲頭
直樹
微生物による腐食の誘起機構を検討した報告例は比較的多いが,経験的に知られている微生物による腐食速度の上昇に関しては,いまだ解明すべき点が多く残されている.そこで,微生物がカソード反応を大幅に促進するとする最も単純な仮説に基づき,その妥当性を自然海水中のステンレス鋼を例にとって検証した.その結果,微生物が形成したバイオフィルムによってカソード電流が増大することを確認した.さらにカソード電流の増大は,バイオフィルムがカソード条件下で成長した場合に著しく,電気化学的条件の相違が逆に微生物に対して影響を及ぼすことも判明した.
[B-2] 「プレート式熱交換器の腐食事例と対策」
JFEテクノリサーチ株式会社 篠田 修和
化学プラントにおいては,様々な熱回収のため,熱交換器が設置されている.設計段階では,腐食に考慮して材料選定なされていても,その後の運転条件の変更などにより予期せぬ腐食損傷が発生することがある.
本プロセスでは,厳しい腐食環境が疑われたため,設計段階では,腐食損傷に考慮してステンレス合金を選択したが,早期に損傷が発生した.その後,設計陣に操業者,材料技術者が加わり,材料,操業条件から対策を検討した.対策は,材料側で行うこととなり,C276合金,Tiを候補材としてあげ,電気化学試験および実環境での暴露試験にて耐食性を検討した.
以上
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