Abstract
平成20年度 第4回材料のパフォーマンス研究会 講演者と概要
[A 講演]
「硫黄ガスによる銀の腐食挙動の特徴」
横浜国立大学 石川雄一
電子部品の接点、回路、電極材料として使用される銀は一般的に水や酸に強いが、硫黄ガスが微量存在する大気中で硫化物を形成し、接触不良や断線などを起こす。本講演ではまずSO2およびH2Sによる銀の腐食挙動の違いについて紹介する。そして次に微量の硫黄ガスの発生源として加硫ゴムからのアウトガスを取り上げ、銀の腐食挙動の特徴および腐食メカニズムについて議論する。
[B 講演]
「初期段階の銅の大気腐食に関する考察と課題」
NTT東日本 渡辺正満
銅は良好な電気的特性、熱的特性を有し、電子部品や電子デバイスに広範に用いられる金属である。しかしながら、大気中での銅の腐食による電子部品・電子デバイスの故障が問題となっている。銅の大気腐食については1920年代後半からのVernonによる研究が先駆けとなり、腐食性ガスや腐食性粒子の影響を含め、多くの知見が得られている。昨今の電子デバイスの微小化に伴う腐食許容量の著しい減少を考えると、比較的初期段階での銅の大気腐食挙動を知り、その対策を考えることが必要である。しかしながら、従来の研究では銅の構造材(屋根材など)としての腐食挙動を調べているものも多く、初期段階での知見は高濃度ガスを用いた実験室での加速試験以外にはほとんど得られていないのが現状である。そのような現状を踏まえ、これまで筆者らは実環境中への短期間暴露により銅板上に生成する腐食生成物の物理的・化学的特徴を機器分析法により評価してきた。本発表では、これまでに得られた知見を紹介すると共に、現状の課題について触れたい。
[不働態]
「不働態にある各種金属材料の微小腐食速度の定量化」
東京電力 深谷祐一
不働態にある金属の腐食速度は極めて小さいことから、通常の産業分野で工学的に問題となることは少なく、したがって、その速度が定量化された例も少ない。しかし、放射性廃棄物の地層処分のような分野では、材料に対して数万年の腐食予測が求められており、この場合には、たとえ不働態にあるといえども、その微小な腐食速度に基づいた設計が必要となってくる。本講演では、不働態にあるステンレス鋼、炭素鋼、チタン合金、ジルコニウム合金など各種材料の微小な腐食速度を、電気化学的手法によって定量化した例について紹介する。
以上
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