Abstract
平成21年度 第1回材料のパフォーマンス研究会 講演者と概要
[B 講演]
「粒界腐食感受性に及ぼす微量元素の影響」
(株) YAKIN川崎 藤田 篤
ステンレス鋼において、ASTM A262 Practice C(Huey Test:65%硝酸腐食試験)に定める鋭敏化熱処理(675℃×1時間)を行った場合、粒界における微量元素起因のCrカーバイド、金属間化合物(χ相、Laves相、σ相)、またはリン化物を生じる。沸騰した65%硝酸に浸せき(48時間×5)すると、粒界近傍のCr欠乏相、あるいは金属間化合物、リン化物自体が腐食を起こし、粒界腐食を起こすことが知られている。しかし、Moを6%含有したスーパーオーステナイトステンレス鋼、並びにNi基合金において、CとSiがどのように影響を及ぼすかは知られていない。そこでCとSi濃度を変化させ、粒界腐食感受性にどのような影響を及ぼすかを検証した。
[不働態]
「チタンの不働態を破る」
(株) IHI 中山 元
チタンの孔食電位は数V以上と非常に高いが、それでも、孔食電位以上に保持すれば、局所的に不働態は破られる。さらに、不働態の破壊を連続的に起させれば、あたかも全面腐食を起こしたかのように減肉させることが出来るため、いわゆる「電解加工」がチタンにも適用されているが、合金系、製品形状の変更に伴い、電解加工面の形状不安定が生じることがある。本講では、形状不安定事例に伴う小手先の対策を紹介する。
チタンの表面を物理的に引っ掻くなどして不働態皮膜を破壊させても、速やかに再不働態化する。これまでも、スクラッチ試験、ひずみ電極などを用いた試験・評価が行われてきた。本講では、板厚が十分に大きな構造部材を前提として、幾つかの方法で表面に傷をつけながら短絡電流を計測する方法で、再不働態化過程を計測した状況を紹介する。
[不働態]
「ステンレス鋼の不動態膜と実際の表面」
新日鐵化学 (株) 伊藤 叡
Fe-Cr合金、及びステンレス鋼の不動態膜の基礎的な特性について、これまでの知見と考え方をレビューした。皮膜の構造、成分や結合水の役割などを304鋼を例にとって述べる。また実際のステンレス鋼には研磨仕上げ、酸洗仕上げ、焼鈍仕上げなどがあり、それぞれ皮膜の状況が異なるとともに、実用上注意すべき点も述べる。さらに焼鈍仕上げを利用した例としてフェライト系ステンレス鋼の光輝焼鈍皮膜による高耐食性付与の場合をそのメカニズムとともに述べる。
以上
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