Abstract
平成22年 第3回材料のパフォーマンス研究会 講演者と概要
[A講演] 「建築設備配管・機器における異種金属接触腐食事例」
(株)竹中工務店 山手 利博
建築設備配管系において使用される設備用水は多くが市水や地下水などpH中性で溶解塩類の少ない淡水であるため,腐食問題は化学や海水環境などの産業分野に比べて重要には位置付けられていない.しかし,過去に遡ってみると,亜鉛めっき鋼管が飲料系にも使用されていた時代から,赤水やさびこぶによる詰まりの障害とともに異種金属接触腐食による被害は度々問題視されていた.
今日のようにステンレス鋼,銅・銅合金,アルミニウムあるいはチタンのような耐食性材料が使用されるようになっても,各種金属材料の組み合わせのうえから異種金属接触腐食の問題は重要な課題と考えられる.今回の講演では,建物の中で使用される建築設備配管・機器において発生した異種金属接触腐食の過去の事例を中心に,関連の実験や文献・資料からのデ-タなどについても紹介する.
[B講演] 「13Crステンレス鋼のすきま腐食におけるアニオンの影響」
福井県工業技術センター 中津 美智代
13Crステンレス鋼製の織機部品ヘルドの水道水中のER.CREV とCR.CREV は,同濃度のCl―を含む純水中に比べ高く,2.3 mM[Cl―]付近で最大で200 mV上昇した.水道水中ヘルド試験片を定電位保持してすきま腐食を発生させた時,電流上昇の速度が,同濃度のCl―を含む純水中に比べ遅れた.
すきま腐食に対する水道水中のCl―以外のアニオン成分の作用が推測されたので,今回,0.11~5.6 mM [Cl―]の溶液中,ヘルドの成長性すきま腐食の発生と再不動態化に対する水道水成分の硝酸イオン,硫酸イオンおよび炭酸水素イオンの影響を調査した結果を報告する.
[B講演] 「高濃度ハロゲン水溶液中におけるマルテンサイト系ステンレス鋼の応力腐食われ」
JFEスチール(株) 木村 光男
最近の油井開発の高深度化に伴い,チュービングとケーシングの間に入れる油井仕上げ液として比重の高いCl,Br金属塩の高濃度水溶液が使用される機会が増えてきた.一方で,耐CO2腐食の面からチュービングにはマルテンサイト系ステンレス鋼が使用される場合も多く,両者の組合せにより鋼管に応力腐食われが発生する事故が報告されている.
本講演では実フィールドで起こった事故例,およびマルテンサイト系ステンレス鋼の応力腐食われに及ぼす環境因子の影響として,ハロゲン濃度,温度,添加剤等の影響を調査した結果を述べる.
以上
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