Abstract
平成23年度 第4回材料のパフォーマンス研究会 講演者と概要
[A講演] 「エポキシ樹脂の耐食性」
東京工業大学大学院理工学研究科 久保内 昌敏
エポキシ樹脂は耐食性が高く、防食塗装やコーティングあるいは薬液環境で使う耐食樹脂ライニング等でも使われている。
エポキシ樹脂主鎖の化学構造にもまして、硬化剤によって大きく物性を制御することができ、耐食性もまた大きな影響を受ける。
例えば、酸無水物で硬化したエポキシ樹脂は酸には強いがアルカリによって分解し、逆にアミンで硬化したものはアルカリには強いが酸に侵される。
どのような劣化挙動を取るのか、またどのように硬化剤を選べば少しでも高い耐食性が期待できるのかについて、基本的な考え方を紹介する。
[B講演]「損傷形態と溶接補修」
原技術士事務所
早稲田大学材料技術研究所 客員研究員 原 泰弘
石油精製、石油化学装置は老朽化に伴い毎年損傷事故が多発している。国内設備は保安四法に基づき設計製作されているが、まず、それに基づく報告事故発生状況、発生原因について述べる。次いで、高温(乾食)、湿食による様々な実損傷例を示す。これらの損傷に対し、現在国内法では設計上の必用肉厚をマイナスした場合、元の肉厚に戻す必用がある。
ここでは減肉部復旧に対し肉盛り溶接を適用する場合、国内法ではどのように規定されているかを示す。終わりに現在米国ASMEで稼働設備に対し規定される維持規格の考え方と日本における維持規格に関する検討状況を述べる。
[B講演] 「建築設備配管の腐食における最近の話題」
新菱冷熱工業(株) 中央研究所 松川 安樹
公共の建築物の多くでは室内の空気調和制御が一般に行われており、夏は涼しく、冬は暖かい環境があたりまえのように提供されている。また、半導体やナノテクノロジーの分野においても、生産ラインの空気調和制御は重要な役割を担っている。ビルや工場を人体に例えた場合、空気調和設備をはじめとする給排水衛生設備・電気設備などの建築設備は、人体の臓器や血管にあてはめて考えることができる。人が病気やけがで生活に支障を来たすのと同様、建築設備配管の劣化による機能低下は都市生活や生産活動に大きな障害をもたらす。また、建設業を取り巻く環境は世界経済の低迷や少子高齢化問題、
地球環境問題に対応するために「スクラップアンドビルド」から「ストックアンドメンテナンス」の時代へと変遷し、建築物の長寿命化が強く求められている。
こうした背景のなか、建築設備の分野では、ステンレス鋼を使用する機会が増えている。例えば、給水・給湯配管、受水槽、空調機ドレンパン、プレート式熱交換器など、我々の生活の身近なところでたくさん使用されている。建築設備の使用環境は、プラント設備と比較すると温度や水質の面で非常にマイルドな環境であるが、稀に腐食による障害が発生することがある。ステンレス鋼は錆びない材料だと信じている人が多いので、腐食障害が生じた際には大きな問題になる。こうした問題を解決するために、関係する学協会(ステンレス協会、空気調和・衛生工学会)では、ステンレス鋼を上手に使用するための技術指針が現在も検討されている。本講演では、建築設備におけるステンレス鋼の使用状況、および最近発生した腐食事例と対策を紹介する。
以上
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